体がだるい。


ベッドの上にぐったり横になって、リボーンはぼんやりと天井を見つめていた。
――だるい、そして重い。それでいて眠れない。
病気などかかることもないアルコバレーノの身、不調の経験のない体と精神にはこの状態は思ったよりも堪える。小さく息を吐いたとき、ドアの開く音がして、遠慮がちに声がかけられた。

「――小僧?」
その声の方向にわずかに顔を向けることで、自分が起きていることを知らせる。相手が誰かは解っていた。この地下の住居には今、リボーンと山本しかいない。
常になく静かに扉を開けて、常になく静かな足取りで、山本はリボーンの横まで歩み寄った。手に何か持っている。水と、いやに古くさいアルミの洗面器だ。黙って見上げていると、心配気な表情で山本が覗き込んできた。
「小僧、何か食べたいものないか?」
大きな手が、10年前とちっとも変わらない暖かな手が伸びて、額に当てられる。続いて水で濡らされたタオルが、そっと乗せられた。話を理解しきらず自分流の解釈をしてしまうのが相変わらずな山本は、リボーンの体調不良の原因を「ちびたち共通の持病」だと思っている。
――まあ、当たらずも遠からずだ。
「……桃缶とか買ってくるか?」
「いい」
「でも何か食わないと、力が出ないだろ?」
「お前がいてくれたらいい」
一瞬、驚いたようにリボーンをまじまじと見て、それから山本は破顔した。
「小僧、やっぱり甘えん坊なのなー」
笑ってぽんぽんと頭を撫でられて、リボーンはちょっと眉間に皺を寄せた。それにまた笑って軽く皺をつついて、山本は手近にあった椅子をひょいと枕元に据える。座って、再度リボーンを覗き込んで微笑んだ。

「おれここにいるからさ。安心して眠っててな。」

囁くような声と一緒に、柔らかな掌がリボーンの瞼の上を優しく覆った。そのくらがりに大人しく目を閉じて、リボーンはようやく訪れた眠気に知らず知らずのうち、安堵の息をついた。



(…10年後におまえがいて、よかった)

(……側にいてくれて、よかった)








アジトでらぶらぶリボ山。。



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